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【日本をリードする経営者・中田航太郎の挑戦】予防医療ですべての人が豊かな人生を送れる世界に

SAMURAI CEO2025

株式会社ウェルネス
代表取締役

中田 航太郎

1991年、千葉県生まれ。幼少期に喘息で入院した際の主治医に憧れ、医師を目指す。東京医科歯科大学医学部卒業後、総合診療医として働くも現代の医療構造に違和感を感じ、予防医療をメインテーマとして2018年6月に株式会社ウェルネスを設立。著書に「人生100年時代を元気に生き抜く 医師が教える経営者のための『戦略的健康法』」。

そもそも病気にならないことが最大の幸せ。予防医療で実現を

株式会社ウェルネスは主に「パーソナルドクター」という病気の治療ではなく、健康を維持して病気の“予防”をすることを目的とした予防医療サービスを提供する会社です。

今は、主に病気で倒れた時の経済リスクが大きい経営者やフリーランスの方を対象に展開を進めていて、約600人に利用されています。

「パーソナルドクター」のサービス内容は1年単位のサブスクリプション型で、お客様1人に対しウェルネスのパーソナルドクターが1人担当として付き、365日健康維持のためのかかりつけ医としてサポートするというものです。

最初にドクターとマンツーマンで面談を行い、今の健康状態や既往歴、ご家族の病気や体重の変化、睡眠時間や過去の人間ドックの結果などをヒアリングし、リスクに応じたオーダーメイドの人間ドックを受けていただきます。

通常の人間ドックは病気がないかを調べることを目的としていますが、僕らは今後の健康管理のために現在の課題や将来のリスクを可視化することを目的としているので、通常の人間ドックの3~4倍のデータを取得します。

そして人間ドックの結果を踏まえて、ご自身の体に抱えている課題の解決や、病気を予防していくためにはどうすればいいかKPIのような目標を設定し、その目標達成に向けて定期的な面談や365日の相談を通して伴走サポートしていきます。

医者が起業するとメディカル系やヘルスケア系の訴求になりがちですが、僕らのゴールは病気をなくすことではなくいい人生を生きること。

病院の先生は数値をよくすることが目的なので、お酒やお肉をやめなさいといった定型的な提案をすることも多いですが、僕らはお客様の人生をよくすることを目的としているので、お客様が目指すゴールを達成するにはどうすればいいか、食事や運動管理、受けるべき検査などをアドバイスしてサポートします。

特に経営者の方は30年後のビジョンを描いている方が多いのですが、しっかり健康管理をしていないと30年後健康に生きている保証もない。

ここが盲点になっている方は結構多いと思っていて、そういう方たちの経済的価値を予防医療で高めることができると考えています。

戦略的予防医療の考えやビジネスはアメリカではすでに根付き始めていますが、国内にはまだ前例がほとんどないブルーオーシャンです。

また、医療系のサービスというとパッケージ商品が多いのですが、僕らはオーダーメイドで提供することを重視しています。ライフスタイルや価値観が多様化しているなかで、パーソナライズされたオーダーメイドのサービスは差別化としてキーポイントになると考えています。

DX化も積極的に行っていて、紙を使わずにクラウドでデータの管理や提供をしたり、世界中のドクターの意見をその日のうちに聞けたりする点で簡単に真似できないサービスになっているかなと思います。

憧れてなった医者のキャリアを捨て、人が幸せに生きられる医療の確立へ

僕は4歳の頃に喘息を患っていて、その時にかかった先生がきっかけで医者になることを決めました。

喘息の苦しさを治せる医療の力をすごいと思ったし、なにより先生と話すだけで安心できたというのが一番のきっかけです。

やっぱり不安を抱えながら生きるのは幸せじゃないので、安心感を与えられる医者という存在は、めちゃくちゃいい仕事だなと思っていました。

でも実際になってみると、急患やイレギュラーな対応で患者さんに安心感を与えるような会話をする余裕はなくて。

それどころか、周りを見ても急患が運ばれれば家に帰れず家族と過ごせないような状況にある先生が多く、患者さんのご家族や社員の方もつきっきりでICUの前にいるような状態でした。患者さんが助かればハッピーエンドっぽいのですが、実際はいろいろな人に莫大な経済コストや精神的な負担が大きくかかっていると感じていました。

なので、そこの負担をなくしてあげる方が社会にとって価値が高いなということと、医療構造を変えたいという気持ちで起業を決意しました。

医療は、基本的に患者さんと“点”で関わるので、課題が顕在化したら病院に行って、解決したら帰されて何かあったらまた来てねというようなコミュニケーションになってしまうのですが、僕は定期的に医者に会うことに価値を置いていたので、点ではなく”線”で関わってずっと伴走していくモデルの方がいいなと思ったのも創業したきっかけの1つです。

一方で、今までにない「0→1」の事業やサービスのモデルなので、仲間を集めるのも大変ですし、予防という明確な効果を実感しにくい領域においてベネフィットやコスト対効果を伝えることなど、スタート時のハードルは高かったです。

ただ、病気を防ぐ予防医療というビジョンは明確で受け入れられやすかったので、見込んでいた通りの需要があり、刺さる人には刺さってPMFの達成、そしてクチコミでどんどん価値が広がっているという実感があります。

「倫理的であれ」は絶対。目指すのは総合ウェルネスカンパニー

僕らはいくつか行動指針を定めているのですが、一番大事にしているのは「倫理的であれ」ということです。

医療やヘルスケアは情報の非対称性が非常に大きいので「これ飲んだら若返る」とか「この点滴打つと疲れなくなるよ」とか、エビデンスがないものでも騙そうと思えば簡単に騙せてしまうんですよね。

目先の利益を追って倫理から外れたことを行っている企業も多く見ていますが、経済に支配されてはいけない。

もちろんスタートアップなので成長は重要なのですが、やりたいことの根底は「人の人生を豊かにすること」なので、倫理的であるということは絶対に崩すつもりはないです。

僕は幸福は内にあると思っていて、数字で見える成長、あるいはお金や所有物に幸せを感じ始めるとキリがないので、経済合理性を得るために利益が必要という考えのもと、利益を出すことを最大目標には考えていません。

それに、この分野で倫理的でないことをやると人が亡くなってしまうリスクもあります。エビデンスなく売ったものを信じて使った人が死んでしまったら、それは間接的に殺したことになると思っているので、倫理的であるということは絶対だと思っています。

この指針をベースに、まずは経営層の方々がパーソナルドクターをつけることをカルチャーにしていきたいと考えています。

すでに非常に深い医療データをもっているので、データを活用したいろいろな水平展開も可能です。

海外展開はもちろん、美容意識の高い方やジムに通っている方へのアプローチ、経営者以外の従業員様向けのアプリを通してサービスを提供したり、オンライン診療のようなBtoCサービスを展開したりと、将来的には予防から診療までを一気通貫して提供できる総合ウェルネスカンパニーを目指したいと展望しています。

これからのビジネスパーソンが重視すべきは“時代変化への適応力”

ウェルネスと同様の事業を展開しているアメリカの会社は、すでにデカコーンレベルの大きな規模になっています。

なので、ウェルネスで働くと成長基盤が大きいスタートアップでグロース体験ができたり、いろいろな経営者の方とのつながりで刺激を受けたり、医療というセグメントにとどまらず試行錯誤できるという面白さがあると思います。

そういった意味で、ウェルネスで働くのはハードルが高いとも思われがちですが、実際に働いて実績を出しているのは、前職で優秀な成績を収めたとかはあまり関係なく、「予防医学の力で、防ぎえた後悔をなくす。」というビジョンへの共感性が強い人です。

自分でも家族でも友人でも、何かしらの原体験をもっていて、予防医療が本当に大事だと思っている。そういった人たちが誇りを持って働いています。

今までになかったことをやろうとしている不確実性の高いブルーオーシャンの市場なので、開拓するには他社で優秀だったことよりもビジョン共感が根柢にある方が親和性が高いということです。

また、自立性を尊重するフレックスな社風なので、目指すべきところは一緒だけどそれぞれがプロフェッショナルとして高め合う、ジャズのセッションのように調和がとれた関係性ができていると思います。

僕は、医者から起業という特殊なキャリアをもっていますが、根柢にあるのは仕事も人生を豊かにするものの1つだという考えです。自分の信念と合う場所で目の前のことを一生懸命やるということが重要だと思っています。

また、今や10年かけて築き上げてきたものが1日で覆ってしまうといった時代なので、トレンドも捉えながら「今・これから求められるもの」に取り組むことや、とにかくわからないことでも思い切って飛び込むということを、これから働く学生や就職活動をしている人たちには勧めたいですね。

そしてなにより大切なのは、健康管理をしっかり行って、挑戦し続けられる状態を保つことです。

つい先日、「経営者のための『戦略的健康法』」という書籍を出しました。今までの健康に関する本は戦術的な内容のものが多かったと思うんですが、この本では健康でいるための戦略について解説しています。

経営者でなくても新しい気づきがあると思うので、ぜひ手に取って読んでいただきたいです。