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【日本をリードする経営者・尾上幸裕の挑戦】次代を担う人材を育てる―教育とDXで挑む未来創造

SAMURAI CEO2025

株式会社FCE
取締役

尾上 幸裕

和歌山県で生まれ、母親の影響により、幼少期から商売の道を歩むことを夢見る。2002年に同志社大学商学部を卒業し、経営者になるという夢を実現することを決意。「3年で経営者になるための力をつけることができる企業家輩出」の理念を掲げる、一部上場経営コンサルティング会社に入社。入社後、営業推進本部にてフランチャイズの加盟開発に従事し、1年目から同期約100名中トップの成績を収めるほどの優れた実績を創出。その優れた成績が認められ、新卒2年目という異例の速さで営業全20チームの最年少リーダーに大抜擢された。

2004年には同社の新規事業であった、子どものやる気を作る教育プログラム「7つの習慣J®」事業に加入。2011年にFCEエデュケーションとして親会社からスピンアウトする形で独立する。2014年にはFCEエデュケーション学習事業部の事業部長に33歳で就任。2016年にはFCEエデュケーションの取締役となる。2018年に同社の代表取締役社長になり、2019年にはFCE Holdings(現FCE)の取締役に就任。2024年に株式会社日本コスモトピア代表取締役社長に就任。

教育の本質に挑む―「7つの習慣J®」が拓く無限の可能性

私たちFCEの原点は「7つの習慣J®」というプログラムです。このプログラムを通じて、私たちは教育の本質的な課題に向き合ってきました。

日本における問題点でもあり、社会が求める力で一番に来るのは主体性。変化が激しい現代において主体的に選択し、自ら道を切り拓く力は非常に重要です。教育というのは、高校受験や大学受験のためにあるのではなく、社会でどのように活躍できる人材になるのか、そのために必要な力を育むことが本来の目的のはずです。

この「本来あるべき教育の姿」を実現しようとした時、私たちは大きな壁に直面しました。日本では道徳教育や人間教育にお金を払うという文化自体が存在せず、私たちは完全に一からマーケットを作る必要があったのです。そんな中、最初に共感を示してくれたのは学習塾の創業オーナーや、学校の理事長・校長の方々でした。多くの学校は「建学の精神」で掲げる”どんな人間に育ってほしいか”という理想と、実際の教育カリキュラムとのギャップに悩んでいました。体系化された「7つの習慣J®」のプログラムは、そのギャップを埋めるソリューションとして受け入れられていったのです。

このプログラムの価値を最も強く実感したのは、弊社が主催している日本最大級のアクティブラーナー育成イベントである「チャレンジカップ」での出来事です。この大会は、全国の小学生から高校生の子どもたちが、自分で決めた目標に挑戦し、その成果を競い合うというものです。

印象に残っているのは、ある生徒との出会いです。彼は中学時代までずっといじめられており、今後の人生に明るい未来を見いだせていなかったのです。そして高校進学の際も、「自分のことを誰も知らない学校なら、人生をやり直せるかもしれない」、そう考えて高校は別の学校を選びましたが、結果は同じでした。「どこに行っても自分はダメなんだ…」そんな諦めの気持ちを抱えていた彼でしたが、周囲の後押しもあって、このチャレンジカップへの参加を決めたのです。

プログラムを通じて、彼は「友達を作りたい」という素直な目標を立てました。一歩ずつ、着実に行動を重ねていった結果、2人の友達ができました。その小さな成功体験が自信となり、なんと大学では自らサークルを立ち上げるまでに成長したのです。

チャレンジカップ当日、約1,000人が集まるホールで、彼は自身の経験を発表することになりました。当然人前での話に慣れているわけではありません。不安と緊張の中で勇気を振り絞って登壇し、「僕でも変われたんだから、みんなも一歩を踏み出す勇気を」と力強いメッセージに私の心は震えました。かつての自分と同じように孤独を抱えている人たちへ向けた彼の言葉には、非常に重みがありました。自分らしく生きることを諦めかけていた一人の少年が、ステージの上で堂々と自分の経験を語る姿に、会場全体が静まり返ったのを今でも覚えています。

その時、私は確信したのです。このプログラムは、私たち大人が考えている以上に、子どもたちの人生に大きな影響を与えることができるのだと。

「振り返り力」を育む ―224万人の成長を支えたフォーサイト

教育のデジタル化が進む中、私たちが手がけているのが「フォーサイト」という手帳です。これまでに累計224万人以上の児童・生徒が利用してきたこの手帳は、継続して記入することを通して「PDCA」を回す力をトレーニングすることができるように設計されています。

私たちは、「PDCA」を回すために必要な正しい振り返りを実践するには3つの力が必要だと考えています。1つ目は「自己客観力」、つまり過去の自分を客観的に見る力です。2つ目は「自己肯定力」、これは失敗を「未」成功体験としてとらえ、成功への学びに変換する力です。そして3つ目が「自己革新力」、これはうまくいったことの理由を探究し、さらに自分の可能性に挑戦する力です。フォーサイト手帳は、子どもたちがこれらの力を無理なく身につけられるよう、細部まで工夫を重ねて作られています。

そして現在、私たちは時代の流れに応えるべく、デジタル版のフォーサイト手帳の展開にも力を入れています。これは、子どもたちにとってより身近で使いやすい形でフォーサイト手帳を提供することを目指してのことですが、教育現場のデジタル化には独自の課題が存在します。例えば、GIGAスクール構想によってタブレット端末が各校に配布されたものの、その活用方針は学校によって異なっているのが現状です。端末の家庭への持ち帰りを推奨する学校がある一方で、校外持ち出しを禁止している学校もあり、こうしたガイドラインのばらつきが、デジタル教材の本格的な普及を妨げる要因となっています。

このような状況を踏まえ、私たちは紙の手帳を中心としながらも、アプリ版を選択できるハイブリッドな形での提供を続けています。ただし、これはあくまでも手段であって目的ではありません。私たちが大切にしているのは、子どもたち一人ひとりが自分で考え、行動を起こせるようになることです。その本質を見失うことなく、デジタル化という新しい波に向き合っていきたいと考えています。

人財育成の常識を覆す―「スマートボーディング」の挑戦

私たちは、企業の人財育成においても大きな革新を起こしています。その代表例が、人財育成プラットフォーム「スマートボーディング」です。このサービスは、従来の研修やコンサルティングの限界を超えるべく開発されました。

開発のきっかけは、アメリカのHRイベントでの経験です。そこでは、新入社員が早期に活躍できる人財となるための「オンボーディング」に関する製品が数多く展示されていました。それを目にして感じた危機感は、日本企業特有の人財育成の課題と重なっていました。多くの企業では、優秀な社員を育成担当にあてがい、結果としてその社員の本来の業務でのパフォーマンスを落としてしまう。これは企業にとって大きな機会損失です。

私たちは、知識の「インプット」のみでは本当の意味での人財育成にはなっていないと考えています。「アウトプット」することで「できる」ようになる、そして会社側が社員の皆様にどのような人財になってほしいか?どのような能力を付けてほしいか等を求める人財像として整理し、それをスキル研修のみではなくマインド研修なども組み合わせ、各企業専用の育成コースとして作り上げるのが、「スマートボーディング」です。

スマートボーディングは、集合研修、個別学習、オンライン学習を一元管理が可能で、現在は1,200社以上の企業に導入されています。さらには、人事評価と連動したスキル管理や目標管理まで含めた、包括的な人財育成プラットフォームへと進化を遂げています。

従来のeラーニングの多くは、「〇〇以上のコンテンツ数があります」と、コンテンツの量にこだわるあまり、実際の活用率は低迷していました。私たちなら、「なぜその学習が必要なのか」「どういう人財を育成したいのか」という本質的な部分から設計し直し、OJTから階層別研修まで、企業の実態に合わせた研修体系の構築が可能です。その結果が、解約率0.9%台という驚異的な継続率に現れています。

「企」業家精神で未来を創造する―求める人材像と組織の理想

FCEは、Great Place to Work(R) Institute Japanが実施する「働きがいのある会社」ランキングで13年連続ベストカンパニーに選出されています。しかし、私は決して現状に満足していません。むしろ、なぜこの状況で選ばれるのだろうかと不思議に感じることすらあるのです。なぜなら、私たちは「働きやすさ」ではなく、「挑戦する機会」を大切にしているからです。

今年の採用コンセプトは「来たれ!新卒『企』業家」です。アントレプレナーファームというカルチャーコンセプトを掲げ、企業家マインドを持ってチャレンジできる人材を求めています。入社後の配属に関しても、特定の事業やポジションありきではなく、会社全体を見た上での適材適所を重視しています。

私は、今の日本には主体性のある人材があまりにも少ないと感じているのです。日本では不毛な足の引っ張り合いや、挑戦する人間を疎む風潮が根強く、これこそが日本からビッグベンチャーが生まれにくい一因になっていると思うのです。

しかし、私はこの現状を変えられると信じています。弊社のプログラムを通じて学んだ子どもたちが成長し、主体性を持って行動する大人になっていく。そして、その方たちこそが新しい価値を生み出していくのです。そんな未来を思い描きながら、私たちは教育とテクノロジーの力で、挑戦する人材の育成に取り組んで参ります。

今、就職活動中の皆さんへ。自分の夢がまだ見つからなくても、それは決して問題ではありません。大切なのは、目の前の課題に真摯に向き合い、常に前に進もうとする姿勢です。これからのFCEをさらに成長させ、社会的価値を高めるためには皆さんが必要です。

決して損はさせないので、一緒に見たことのない景色を見に行きましょう!