株式会社Sales Marker
代表取締役 CEO
新卒で株式会社野村総合研究所に入社、エンジニアとしてシステム開発や新規事業開発に従事。その後、株式会社ベイカレント・コンサルティングにて新規事業・営業戦略立案・DXプロジェクトに携わる。2021年、株式会社Sales Marker(旧:CrossBorder株式会社)を4名で共同創業。国内初のインテントセールスを実現するSaaS「Sales Marker」を開発・提供している。2023年「Forbes 30 Under 30 Asia List」選出、2024年「The Wall Street Journal Next Era Leaders」受賞。一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)協議員。著書に『インテントセールス – 米国企業の6割が実践する興味関心[インテント]データを活用して売上を伸ばし続けるための最先端モデル』がある。
株式会社Sales Markerは2021年に、私を含めた4人の共同創業者で立ち上げた会社です。弊社のサービス『Sales Marker』は、企業の営業効率・成果向上に貢献する日本初のインテントセールスSaaSで、現在まで500社を超える企業様に活用いただいています。
一緒に会社を立ち上げた3人のうち陳と渡邉とは、学生時代にスタートアップ企業でのインターンシップで出会いました。大学卒業後はそれぞれ違う企業に就職し、私も大学入学時から目指していた野村総合研究所(NRI)に入社しました。エンジニアとしてシステム開発や新規事業開発に携わってきましたが、企業、そして社会の課題解決に貢献するためにはビジネスを知る必要があると痛感し、戦略コンサルタントに転身。数多くのお客様と向き合う中で、「活きた」ビジネスを学びました。
次第に自らの事業を立ち上げたいという思いが強くなり、インターンで出会った2人とその後先輩経営者が主催する交流会で出会った荻原の3人を誘い、4人で創業を決意しました。実は、創業して最初にリリースしたのは『Sales Marker』ではなく、『Glance』というビジネスニュースプラットフォームでした。コンサルファームにいた頃、中国語や英語、その他のヨーロッパ言語の情報にアクセスしづらかった経験から、世界中のあらゆる情報の中から自分の欲しい最新情報が毎日手に入るというサービスを作ったのです。しかし、大きな成長が見込めず、方向転換を考えるようになりました。
そもそも私たちには、新規事業開発に役立ちたいという思いがありました。『Glance』もそうしたバックグラウンドから誕生したサービスでしたが、改めて自分たちの強みを見つめ直した時に、浮かび上がってきたのが「セールス」領域でした。私には、横断的なエンジニア経験と新規事業開発の経験が、他のメンバーには、大企業での営業成績1位の実績や、大手IT企業でのビッグデータ活用などの多様な経験がありました。それぞれのスキルや得意な領域を掛け合わせて、日本で初めてのインテントセールスSaaSである『Sales Marker』が生まれたのです。
インテントセールスとは、膨大なWeb検索データ(インテントデータ)を活用し、自社の製品を欲しいと思っている顧客にタイムリーに営業できる手法です。これを用いることで、手当たり次第に数を打つ営業や、営業先から迷惑だと思われてしまうような望まれない営業といった非効率な手法から脱却し、「今ちょうど探していました!」と言われるような理想的な営業活動を実現することができます。弊社の『Sales Marker』は、ターゲティングからキーパーソン選定、キーパーソンに送るメッセージの作成、最適な連絡手段を使ったアプローチまでを自動化し、営業活動の効率化や商談獲得率アップに繋げるサービスです。
2022年3月に『Sales Marker』をリリースし、2022年7月に1億円だったARR(年間経常収益)は、2024年8月には23億円となりました。ここまで早く、大きな成長を遂げられたのは、第一に市場がずっと求めていたサービスを提供できたからだと思います。
営業は、未だに「足で稼ぐ」イメージが強い仕事かもしれません。手当たり次第に100件電話してやっとアポが1件取れるかどうかという具合に、これまでの新規開拓営業は効率が良いとは言えません。辛い、きついと思う人も多く、営業パーソンの8割が退職を検討しているというデータもあるほどです。そんな状況の中、企業にとって中核の活動ともいえるセールスの効率化は長く待ち望まれていました。セールステックにとっては非常に追い風の状況だったのです。
しかし、大きな反響を得て会社やサービスが急成長する中、社内は加速度的に忙しくなっていきました。多くのお客様に喜んでいただける嬉しさの一方で、業務量の急速な増加に対応できず、スケーラビリティの低下に陥る危険性を感じつつありました。
この状況を乗り切るために用いたのが、まず問題は何かを考え、それを解決するために行動する「論点思考」です。こう話すと簡単で当たり前のことのように思えますが、実際には目の前のタスクをこなすことしか見えていないことが多いのです。この論点思考を徹底することにより、大きな成長にも対応できる強さを持った組織となることができたと思います。
現在私たちは、新規事業の6つの要素である「セールス」「マーケティング」
「人材採用」「事業開発」「プロダクト開発」「ファイナンスM&A」のそれぞれの領域に対応するプロダクトの展開を目指しています。2026年までに6つのプロダクトを揃えてグローバル展開し、2028年までには「ビジネスオーケストレーション構想」を実現させる計画です。つまり、ビジネス開発におけるすべてのプロセスを、弊社のプロダクト群の活用により一気通貫で行えるようにするのです。
そして、あくまで私たちは「人間中心」のサービスを提供することを念頭においています。プロダクトが増えると、複雑化したプロダクトに人が振り回されてしまうようなことも少なくありません。しかし、例えばiPhoneのように、人間中心で使いやすいプロダクトが人々に選ばれることは、歴史が証明しています。まず「起業したい」「社会課題を解決したい」といった人の思いがあってこその、私たちのサービスです。この「ヒューマンセントリック(人間中心)」カテゴリーのリーダー企業として、世界に進出していくつもりです。
弊社のパーパスは「全ての人と企業が、既存の枠を越えて挑戦できる世界を創る」です。その実現のために、私たちは「インテント経営モデル」を提示し、実際に実践しています。組織のインテントホイールと事業成長のインテントホイールの両輪を回すことで、人・組織・ビジネスがともに成長していくという概念です。マネジメントの発案者といわれるピーター・ドラッカーは「経営の本質とは、従業員の自己実現欲求を満たすこと」と述べています。従業員のパフォーマンスの最大化により、事業がグロースしていく。何十年も前から言われていることですが、世の中は未だドラッカーのこの言葉には追いついていません。それを実現させるために、「インテント経営」をグローバルスタンダードにしていきたいと思っています。
「Sales Markerを使わない経営なんてありえない」という世界観を目指す私たちには、まだまだやることが山ほどあります。グローバル展開に向けても動き出しており、実際にアメリカやヨーロッパ、アジア各国で営業活動を行っています。『Sales Marker』はSalesforce、HubSpot、Zoom等の名だたる米企業にも導入されており、昨年はドイツの企業での利用もスタートしました。今は本当に面白い局面だと思っています。
どれだけやることが多くても、ハードルの高い課題に直面しても、私がいつも「楽しそう」「ワクワクしている」ように見えるのは、大きな野望を掲げているからです。高い目標を本気で追っていると、目の前の苦労は小さな石くらいのサイズに見えるものです。逆に近くだけ見ていると、目の前に今ある仕事が巨大な岩、崖くらいの大きさに見えてしまう。視座を上げ続けることに力を入れているから、苦労を苦労と思わず突き進んでいけるのだと思います。
私たちの社内には、「野望データベース」というものがあります。社員一人ひとりに「野望(夢・目標)」を書いてもらっているのです。掲げる野望は、ビジネスに関係があっても、なくてもいい。「ポルシェのカイエンに乗りたい」という人もいるし、「日本一のハンバーガー屋を作りたい」という野望を、実際にキッチンカーで実現させた社員もいます。どんな野望も、それが心からのものであれば、辛い局面や課題があっても簡単に乗り越えられます。
自分の設定したゴールを達成するために、今何をするべきか。視座を高くし、常に逆算思考で考えていれば、目の前の課題は自分の望む未来に向けての階段の一歩に過ぎないと思えるようになります。弊社が今掲げる「野望」への道のりは、まだ緒についたばかり。それぞれの心の底からの熱い野望を持つ方たちと一緒に、未だ誰もたどり着いていない場所へと歩みを進めていきたいと思っています。