株式会社Ubicomホールディングス
代表取締役社長
株式会社ワールドの子会社に入社し、飲食部門でキャリアをスタート。1995年の阪神淡路大震災を機に、情報通信産業へ転身し、新規事業の立ち上げに従事。2005年には、Ubicomホールディングスの前身となる会社を設立し、2016年には東証マザーズに上場、2017年には東証一部へ市場変更を果たす。社会貢献にも積極的に取り組んでおり、次世代の起業家を支援するなど、幅広い活動を行っている。
私の経歴は、ワールドというアパレルの会社から始まりました。当時は神戸市が誘致し、神戸のポートアイランドに本社を建てる企業が多くあり、名だたる企業がこぞっておしゃれな本社ビルを建てていたときですね。
その後、阪神淡路大震災が起き、アパレルはもちろん、飲食などのサービス事業も壊滅的な被害を受けました。
そんななかで、私は被害を受けた事業の立て直し、新規事業の立ち上げを任されることになり、株式会社ワールドと株式会社フォーバルの合弁会社を立ち上げ、事業推進責任者になりました。
事業の立て直しに際して、私がまずはじめに着目したのが情報通信産業です。当時はまだソフトウェアエンジニアという概念はあまりなかったものの、市場はどんどん大きくなっていき、エンジニア不足が叫ばれるようになっていました。
人材系の会社はこぞってエンジニアの確保に動き出していましたが、そこで私は人材ではなくパートナー企業を育てたいなと思ったのです。
そこで、目を向けたのが東南アジアでした。縁あって、IBMのOBより勧めていただいたフィリピンの会社(APTi-Philippines,Inc.)を買収し、マジョリティオーナーとなってエンジニア育成に力を入れたのです。
フィリピンの優秀な人材と日本の技術を融合させ、グローバルなIT企業を築くというビジョンを持って、フィリピンから事業を展開しはじめました。
フィリピンに目を付けた理由も紹介します。
当初は、人口の多い中国やベトナムなどの東南アジアの国を見て回りました。そんな時、IBMのOBの方から、フィリピンの会社をご紹介いただいたのがきっかけです。
私が、最終的にフィリピンに決めた理由は、当時日本の平均年齢が約44歳であったのに対し、フィリピンの平均年齢は約22歳と非常に若いということでした。将来も平均年齢はそう高くならないと考え、日本の少子高齢に伴うエンジニア不足を見据えた際に、スムーズな人材確保が可能であると考えM&Aをしました。当時のエンジニア数は数十名でしたが、現在約900名もの人材育成に成功しました。
私自身は、日本でもトップを走る営業マンだったと思います。だからこそ、飲食から転換したあともうまくいっていました。
しかし、別の視点で言うと中小企業からの売掛金は回収が遅れるケースが多く、キャッシュフローが悪化してしまうことがあります。そういった点で、お金の面ではやはり苦労しましたね。
キャッシュフローの悪化を改善する方法としては、銀行融資を受けるという方法も当然考えられますが、これは大企業向けのモデルです。そのため、中小企業の成長には必ずしも適していないと考えました。
そこで自社株式を発行して外部から資金調達を行うエクイティファイナンスや、上場オーナー企業に対して自社のビジョンや成長性を説明して出資を呼び込むなど、必死で資金難を乗り越えることが出来ました。
弊社では、さまざまな事業を展開し成長させることに成功していますが、そのために私が常に大切にしているのは「世の中が困るところは何か」という視点です。
たとえば、弊社のメディカル事業は、医療業界における「困っているところ」がきっかけとなって生まれています。
現在、世の中の病院の多くは赤字になっているうえ、少子高齢化の問題で医師を含めた医療従事者が減少傾向にあります。さらに言うと、お年寄りの方もオーバーフローするほど増えてきているでしょう。
その一方で、いまだに電子カルテの普及が遅れており、手書きまたはPC入力のみでお使いになられている医療機関様が多いのも実態です。
こういった「世の中が困っているところ」の陰には、DX化のチャンスが潜んでいると思います。そういう意味では、何気ない日々の生活にもさらなるビジネスチャンスが潜んでいるかもしれませんね。
実際に、医療業界の問題を解決するために立ち上げたメディカル事業は順調に成長し、弊社は2016年に上場を果たしています。さらに、当時の利益率が15%ほどでしたが、現在ではAI×サブスクモデルが順調に拡大し、63~64%にまで成長できています。
主力商品のレセプトチェックシステムである、マイティチェッカーにおいては、大企業が競合ですが、現在は当社がトップシェアを誇っています。
このように成長ができたのは、世の中がこれから先に困るであろうことに対して、サポートできるビジネスにできたからだと思います。
今の時代、ITリテラシーの高い方が増えてきて、情報をもとにさまざまなことができる世界になってきました。とはいえ、システムが色々な問題を解決してくれる一方で、時代ごとに新たな課題も出てきます。
そのため、今後のビジネスにおいても、マネタイズされている業界はどこか、伸びるか伸びないのか、困るところはどこなのかを探していくことが大事なのは変わりません。
今まではさまざまな業界を大企業がリードしていましたが、時代は変わり今はベンチャーも動けるようになってきました。
だからこそ、人が困っていることを解決するサービスをマネタイズしてしっかりやっていくということを、ベンチャーにやってほしいと呼びかけています。
仕事をする上では、これまでやってきた経験やこういうビジョンを持っている、この仲間と成し遂げたいことがあるといった思いを、変わらずに持ち続けるということは大事です。
その一方で、時代によって変わっていくソリューションは、すぐに取り入れていったほうがいいと考えています。変化を恐れずに、変化に乗っていく経営が伸びていくと思っているからです。
実際にUbicomでは、やる気のあるモチベーションの高い方々にどんどん権限委譲して回していくというやり方を取っています。これによって、過去の経験が豊富な人と、新しい考え方を持った若い人が混ざり合い、さまざまな変化にも対応できるようになると考えています。
あと、目標に向かって邁進しているけど、周りからの理解が得られずになかなか人がついてこないこともあると思います。それでもUbicomでは、頑張っている人が力を発揮できるように応援する環境があります。
新しいことを生み出すことに挑戦しなければ、ベンチャースピリットは生まれてこないと考えているからです。
また、これから経営者を目指す方には、まず素直でいることの大切さも知ってほしいです。
なんでも素直に吸収できる人は、瞬時に物事が判断できる人になっていくと思います。
また、様々な業界の方とネットワークを作っていくことも大切です。もちろん、その上で変化を恐れない姿勢も忘れないでください。
ベンチャーで大事なポイントは、今まで良かったというものを否定ではなく変化させる勇気です。
Ubicomは、これからも変化を恐れず、少子高齢化や人材不足といった課題先進国日本が取り組む社会問題の解決に貢献するビジネスを推進してまいります。そして、当社のビジネスモデルを世界に広げることで、より良い未来を創造していきたいと思います。