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【日本をリードする経営者・木下勝寿の挑戦】ビジネスの基本を貫き世界に通用するeコマース事業に発展させる

SAMURAI CEO2025

株式会社北の達人コーポレーション
代表取締役社長 兼 現役D2Cマーケッター

木下 勝寿

1968年神戸生まれ。
大学在学中には学生企業に所属し、卒業後は株式会社リクルートで勤務。2002年に健康美容分野でeコマース企業「北の達人コーポレーション」を設立し、2015年に東証プライム上場を果たした。また書籍も出版しており、『売上最小化、利益最大化の法則』『時間最短化、成果最大化の法則』『チームX(エックス)ストーリーで学ぶ1年で業績を13倍にしたチームのつくり方』(以上ダイヤモンド社)、『ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング』(実業之日本社)など、ベストセラーも多数。累計27万部を超えている。

今の私たちだからこそ目指せるグローバルメーカー

株式会社北の達人コーポレーションは北海道で生まれ、現在は東京本社と札幌本社の二本社制をとっています。兵庫県の神戸に生まれた私がなぜ北海道を選んだのかというと、この地に可能性を感じたからです。北海道は食はもちろんですが、自然や景観も美しく、海外の人から「アジアのスイス」と呼ばれています。ですが、当社が創業したころ北海道経済は、資源の活用が上手くいっておらず低迷していました。

そこで私たちがしたことは、「お客様は何を望んでいるのか」「お客様は本当に満足しているのか」ということを数値化し、マーケティングの概念を持ってビジネスモデルを作り上げたということです。 

この時に培ったマーケティングや顧客満足のノウハウをもとに、今度は北海道だけではなく世界中の優良な原料を使った化粧品、健康食品等の自社ブランド商品を展開して、今日に至っています。

そんな弊社のビジョンは、「日本を代表する次世代のグローバルメーカーになること」です。近年では、実店舗を持たずにインターネットのみで流通する商品・サービスが増加しており、世界のいたるところでインターネット発信のブランドが生まれています。そんな中で弊社は、デジタル世代から生まれた、世界中の人々から必要とされるメーカーを目指します。

また、今後の事業展開のビジョンとしては、売上1,000億、利益300億を直近の目標として掲げています。これは、世界に通用する日本初のD2Cブランドになるというビジョンのための布石でもあります。

そのために、採用には特に力を入れています。D2Cのマーケットは現在も伸び率が非常に高く、チャンスのあるマーケットだと思っているので、吸収力が高くやる気のある若い世代を積極的に採用しています。実際に弊社を中心となって回しているのは、3~4年目ぐらいの25歳、26歳ぐらいの世代です。まだまだ若いマーケットということもあり、柔軟な考えを持つ人たちの方が、今の流れに乗りやすいのではないかと考えています。

失敗を繰り返して見えてきた経営学

実は、私はリクルートを退職してから別の会社を一度作っています。日用品販売業だったのですが、当時の私は若さゆえの過ちもあり、目先の売上ばかりを追いかけ、商売の原点である「お客様の満足」という視点を忘れていました。その結果、2年目を迎える頃には売り上げは徐々に下降していき、創業2年で事業の継続を断念した過去があります。

当時の私は30歳を超えていました。一文無しで、肉体労働のアルバイトに明け暮れる毎日。このままでいいのか、ここで終わってしまうのかと不安な日々を過ごしました。ですが、そうした不安な日々を1年続け、ようやく「こんなところで終わる人間ではない」と一念発起し、再度起業する決意をしました。

ただ、前回と同じ失敗を繰り返さないために、何がいけなかったのかを改めて振り返りました。そこで気づいたのは、継続・安定した事業を行う必要があるということです。

● 事業はリピートがなければ成り立たない。リピートはお客様の満足がなければ起きない

● 本当に勧められる商品・サービスだけを売ろう 

この2つを念頭に置き、その当時爆発的に普及し始めていたインターネットを使った事業を行うことを決めました。当時の私は、「北の国から」の影響で北海道が大好きで、何度も旅行に行くほどでした。そして、北海道の特産品は本当に美味しいので、これなら必ずお客様に満足していただけると確信し、私は縁もゆかりもない北海道にパソコン2台だけを持って単身で移り住んだのです。

北海道で特産品をインターネット通販で売ることを始めて、すぐに今の状態になったわけではありません。お客様のことを第一に考えて商売をしても、人気が出て有名になれば、他社に真似をされて売り上げは落ちます。その繰り返しを何度かした後で、誰にも真似できない商品やサービスを生み出せばいいのではないか、ということに気づきました。

商品にこだわって作り上げた最初の商品が「カイテキオリゴ」です。その後も試行錯誤を繰り返し、今では「誰にも真似できない商品やサービス」を作り、「こんなに良い商品を作ってくれて本当にありがとう!」といわれるサイクルを作り続け、現在の事業になっています。

小手先だけでは何も得ることができない事実

私自身が長年経営をしてきてわかってきたことは、人を出し抜いてやろうとか、本質的なところを抜いてテクニックだけで乗り切ろうとすると失敗をするということです。本質的なところをコツコツする人は、確実に成果を出すことができます。一方前者の人は、100を目指して行動した場合、0か100のどちらかになるのですが、0になる確率の方が非常に高いです。後者の人は、100を目指して行動しても50しか成果はでませんが、50は絶対に出せます。この状態で、10年、20年が過ぎると、結果はどうなっているのかは明白ですね。

出し抜いたり、テクニックだけで振り切っていた時間がもったいないと思うはずです。出し抜いたり、テクニックだけで行動していた時間は、全くの無駄だから。コツコツやって確実に成果を出し続けることが何よりも大事なことです。

私たちは、2016年から2020年にかけて売り上げが一気に4、5倍になり、周りからは急成長した会社だというふうに見られています。ですが、社内的には急成長したとは思っていません。これまでずっと準備をしてきたものが、ようやく成果に繋がったという感覚だからです。

コツコツやって確実に成果を出すというのは、時間をかけなければ成果が出ないという意味ではないですし、確実に行動をしていると、自分の中では成果を出し続けている感覚になります。大成功している会社は、こういった基本を確実にしているところだと思います。

少し話の流れは変わりますが、経営は新しいことをどんどん取り入れていくことも多少は必要ですが、そこまで重要ではありません。基礎をきちんとおこなうことで、成功できると私は思っているからです。経営者にとって、数字は地図のようなものです。それを見ながら目的地に向かうことが大事なのに、多くの経営者は地図を持たずに歩いているか、時々見る程度の人が多い印象があります。私は、常に地図を細かく見ながら進むべき方向を都度見て決めていますし、地図も自分で作っています。だから、弊社のマーケティングについて、自分以上のマーケターはいないと思っています。

ビジネスの本質を見失わない経営を

ビジネスの本質の部分ですが、これが何かというと、例えば絶対に取引をした相手に損をさせないことです。ここ数年、若手経営者で事業を作って売却し、お金を手に入れている人がいますが、昔は事業を作ったら上場させて、自分で経営を続ける人がほとんどでした。ですが、本当に会社が上手くいっていたら、売却するよりも自分で持っていた方が儲かるはずです。売却するということは、あなたではその事業を伸ばせないから誰かに売却するってことですよね。そして、それを買った相手が、ちゃんと事業を伸ばせる見込みがあると思っているのかどうかも重要です。その辺りをわかっていない人が多い気がします。

負債の大きい事業だから、誰かに売って、自分だけ得をする。それは成功と呼べるのでしょうか?人をだますことが商売だと言っている人であれば成功かもしれませんが、多くの経営者は違うはずです。

私も過去に事業を売ったことはありますが、自分の儲けではなく、買い取った人が成功させられる見込みがあるかどうかという目線で売却しました。売却した後もフォローしましたし、その会社が次の会社に売却するまでフォローをし続けました。こういう姿勢で仕事をしていると、周りからの信用を得られますし、絶対に自分の会社がつぶれることはないと思っています。ここまで考えてM&Aを行っている人は、どれだけいるのでしょうか。

また、資金調達も同じです。若手経営者で資金調達ができたら成功だと言っている人が多いのですが、それは本当に成功でしょうか?

資金調達というのは、その資金を使って利益を出してリターンをするというところまでが流れとしてあります。リターンをしないというのを繰り返せば、その人のことを誰も信用しなくなります。一時的なお金を得て喜んでいるだけでは、ビジネスの本質がまだまだわかっていないということを理解する必要があると思います。

私はビジネスの本質を見失わずに、コツコツ確実に歩んでいくような経営者が増えたらいいなと思っています。