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【日本をリードする経営者・香丸俊幸の挑戦】福祉事業における新たな価値づくりを目指して

SAMURAI CEO2024
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クローバーグループCEO兼株式会社CLOVER
代表取締役

香丸 俊幸

1972年5月1日生まれ。東京都世田谷区育ち、桜修館、玉川大学卒業後、株式会社セブン−イレブン・ジャパン、株式会社ベンチャー・リンクを経て経営コンサルタントとして独立。IT企業や外食企業の役員などを歴任して2010年に株式会社CLOVERを創業。「人が幸せになるコミュニティつくり」をビジョンに地域密着型デイサービスや放課後等デイサービス、高齢者と障害児の共生型サービス、障害者シェアハウス、就労支援、介護人材紹介会社、飲食店を経営している。

高齢者の福祉にとどまらず、シナジーで幸せを生みだす

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弊社は高齢者の福祉を中心に事業を展開している会社です。現在は東京都心・千葉県でお泊りデイサービスや、子どもの療育を行う放課後等デイサービスを運営しており、デイサービスが15事業所と、放課後等デイサービスが2事業所、共生型サービス1事業所(2023年12月時点)があります。

2023年の4月に都内初の、高齢者のデイサービスと発達障がいの子どもの療育が完全ワンフロアで交流する「共生型サービス」をオープンしました。そこではお互いにコミュニケーションを取ったり、子どもにも掃除や料理を手伝ってもらったりしていて、学校で居場所がない子どもや不登校の子どもの役割や居場所づくりをしています。それにより、普段全然話さない子が、そこではすごく生き生きしているといったケースが多々あるんです。高齢者にとっても、何かを教えたり話したりするだけですごく元気になるので、そうした相乗効果が生まれる場所になっています。

ほかにも、群馬県高崎市で障害者のグループホームの運営や、前橋市でお弁当製造販売による障害者の就労支援、事業者と求職者をマッチングする人材紹介事業、飲食店の経営などもしています。このように広く事業を展開しているのも、弊社の掲げるビジョン「VISION2027=2027年までに人を幸せにする7つの事業を成功させる」に向けてです。ずっと同じ事業をしていても存続できないので、新しいことをどんどんやっていかなければなりません。そこで「福祉×○○」を軸に、教育や飲食、IT、農業、地方創生などの事業を、それぞれシナジー効果を持たせて展開していこうと考えています。

例えば地方創生で言うと、ただ単に地方に事業所を出すのではなく、その地域が活性化できるようなことも掛け合わせながら事業を作ります。実際、長野県安曇野市で畑を買っていろいろな作物を育てているのですが、ゆくゆくはそこで高齢者のゲストの方が農業をしたり、障がいのある方が仕事をしたり、できたものを東京のデイサービスで売ったり。そういうふうに、地域も超えてシナジー効果を生み出していきたいです。

”自費でも来たい”と言ってもらえるサービス

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弊社の事業の特徴は、都心で家賃の高いところに特化して事業所を出しているところです。同じことをしている会社はほかにありません。そもそも、介護報酬は上限が決まっているので、いくら上質で高価なサービスを提供しても売り上げに限界があり、家賃や人件費が安いところに出した方が利益が高いんです。でも、あえて家賃の高いところで出しているのはほかの会社との違いですね。

また、サービス面でも差別化ポイントがあります。まず、自立支援にすごく力を入れていることです。できることをやってあげてしまうと、その機能がどんどん落ちていってしまうので、お皿を洗ったり拭いたりしてもらうなど、何か役割を持ってやってもらうことを大切にしています。そしてもう一つ、外出することです。そういう施設ってほとんどないんですよ。外出したりイベントをしたり、近隣の保育園の子供たちが遊びに来たり、地域の人たちも巻き込んだ社会参加を積極的にしています。こうしたポイントによって、デイサービスの基本である自立支援・社会参加・ご家族の負担軽減という3つの目的をしっかり果たせているのが、弊社の強みです。

介護保険って、要介護認定によって週何回まで、という基準が決まっているんです。その基準を超える場合は自費でサービスを受ける必要があって、1回1万円以上かかってしまいます。それでも、「自費を払ってでも来たい」と週7で来られる方がいるんですよ。それも、こうした、ほかにはないサービスと、思いやりのあるキャストの皆さんの存在があってこそだと思います。

起業しない選択肢はない。できると確信したデイサービス事業

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私は、母が小料理屋の経営をしており、父はエンジニアとして独立、親戚が芸能プロダクションの社長という家庭で育ってきたので、起業するのが当たり前だと思っていました。やらないという選択肢はなかったですね。それで、経営を学ぶために新卒でセブンイレブンに入り、その後さらに広く経営を学ぶためにベンチャー・リンクというコンサルティング会社に入りました。

ずっと経営がしたいと思っていて、そのために何の事業をするかずっと探していたところ、小規模のお泊りもできるデイサービスに出会いました。今後それが伸びるだろう、ということから起業に向けてスタートし、50箇所くらいリサーチに行ったり、いろいろなデータ分析をしたりインタビューしたりしました。

その中で介護施設の実態に触れ、どよんとした雰囲気の施設や、働く人も高齢者も生き生きとしていない様子、給料が安くて休みもないという現状を知って「これだったら私がやった方がきっとうまくできる」と思ったんです。そして、それまでの仕事で経営や新規事業の研究をしてきた経験からして、確実に行けると思って起業しました。なので、失敗することへの不安は全くなかったですね。

決めた場所で一生懸命働くことがキャリアを築く

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弊社で働くキャストの方々のうち、6割ほどは福祉業界未経験者です。未経験でも歓迎ですし、資格取得の支援で介護福祉士などの資格を取っていただくことができます。私自身も福祉業界は素人でしたし、むしろ素人の方がうまくいくと思っているぐらいです。もともと、セブン‐イレブンも小売未経験者の方々によって創業されたんですよ。それで当時は経営コンサルや専門家から「コンビニなんか絶対に流行らないからやめろ」と散々言われたんだとか。そういうこともあって、お客様視点がある方が事業はうまくいく、専門家の発想でいくなとずっと言われていました。ベンチャー・リンクでも近い考えがありましたし、飲食店で成功した母ももともとは料理をしておらず、料理教室にちょっと通っただけだったらしいんです。「私、素人だから」とよく言っていましたね。なので、別にプロフェッショナルじゃなくてもお客様の視点で仕事ができる素人の方がうまくいくんじゃないかと思っています。

そんな中でも一緒に働きたい人は、素直でポジティブで勉強熱心な方ですね。いまはそれがなくても、入ってからそういう人になってほしいと思います。素直さに関しては、コンサルティング会社で働いていた時、どういう経営者がうまくいくか、どういう人が成果を出すかっていうのを分析したり考えたりしていたのですが、素直に聞いて行動する人が成果を出すと分かったんです。なので、素直さはすごく大切だと思っています。

そしてポジティブさについては、結局仕事でもなんでも捉え方次第だと思うからです。例えば同じ仕事をしていても「なんかつまんないな」「上司に注意されて嫌だったな」と思うよりも、「仕事のここが楽しいな」「上司にはこういう意図があって言ってくれたんだな」と思ってやった方が成果も出ますし、その人自身も幸せじゃないですか。私自身、ポジティブに捉えられるようになってからの方がすごく精神的にも楽しくなりましたし、仕事をしてても楽しいので、そういうふうに考えられる人がいいと思っています。

勉強熱心については、以前働いていたコンサルティング会社を創業した日本でもトップクラスのコンサルタントの方に、「経営者でどの素養が一番必要ですか?」と聞いたところ「勉強熱心」と言っていたんです。実際こうして介護に関わっていて気づいたのですが、ベテランの介護士でも、今の介護を知らなかったり情報が古かったりするんですよね。適切なサービスを提供してゲストに喜んでもらうためには、情報をアップデートしたり勉強したりしながら実践に活かしていくことが必要なので、どれだけ経験を積んでも勉強を続けられる人がいいと思います。

仕事や会社選びって難しいと思います。職業もたくさんあって、分からないことだらけで、行きたいところに行けるとは限りません。でも、その中でも決めた場所で一生懸命やることが、将来につながってくんじゃないかと思うんです。そこで一生懸命やった経験が、この先のキャリアを築いていくんじゃないかと。「あの会社に行けばよかった」「本当はこっちに向いてたんじゃないか」などと迷っていてもきっと成果は出ないと思います。それに、個人のキャリアは偶発性が80%という研究結果があって、つまりほとんどが偶然の積み重ねなんです。そういうマインドで、自分自身がやってきたことを肯定できるようになれば、きっと仕事を楽しむことができるんじゃないかと思います。