C Channel株式会社 代表取締役社長
森川 亮
1967年、神奈川県出身。筑波大学第三学群情報学類情報工学専攻を卒業した1989年、エンジニアとして日本テレビ放送網株式会社に入社。1999年に青山学院大学大医学院国際政治経済学研究科修士課程(MBA)を修了し、2000年にソニー株式会社へ。2003年5月、韓国系IT企業のハンゲームジャパン株式会社(現LINEヤフー株式会社)に入社し、2007年に代表取締役社長。2015年にC Channel株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。
女性向けのライフルタイル動画サービスなどを展開
弊社は、動画を中心とした若い女性向けのメディア事業、eコマース事業、インフルエンサーマーケティング事業を手掛けています。私たちが掲げているのが「人と技術の力で、笑顔を作り世界を元気にする」というミッション、「誰もが自分らしく輝ける機会を創る」というビジョン。これらのもとで事業の核となっているのが、SNSで影響力を持つインフルエンサーとブランドのマッチングプラットフォーム「Lemon Square」です。
そのほかにも、創業以来展開しているライフスタイル提案型の動画メディア「C Channel」、ママ向け動画メディア「mamatas」など、企業の商品・サービスを紹介する動画広告コンテンツの企画・制作・配信、イベント企画・運営といったマーケティング事業を日本と中国、インドネシアで展開しています。また、メディアやインフルエンサーが紹介するアパレル、化粧品などを販売するEC事業も日本と中国で手掛けています。
それらの事業でもとりわけ「Lemon Square」は、多角的なデータを解析することでインフルエンサーマーケティングの効果の可視化を進めています。今後はクリエイターやソーシャルバイヤーなど、さまざまな個人の活躍の場を創出するためにサービスを強化することを目指しています。
国民的チャットアプリ「LINE」をリリース
新卒で入った日本テレビで、入社後すぐは社内でプログラミングを担当していましたが、その後は報道システムの担当になって選挙の出口調査結果から当落を予測するシステムを日本で初めてリリースしました。そして米国の放送局を巡るなどして視聴率の分析システムを構築する仕事も経験し、次第に「グローバルな事業に携わりたい」という気持ちが高まっていきました。
そうして世界の大舞台を夢見てソニーに転職したのですが、そこで自分のやりたいことを思うようにできなかったのです。組織が大きいので意思決定に時間がかかり、どうしても動きが遅くなってしまっていました。ジョイントベンチャーを立ち上げ早いスピードで成長したものの、ソニーショックによるソニー本体の戦略の見直しなどがあり、なかなか思うように業務が進まなくなりました。そんな状況にもどかしさを感じ、また「これからはブロードバンドだ」と考えたことからブロードバンド先進国の韓国系の会社で働きたいと思い、転職を決意しました。
その後オンラインゲームポータルで成長していたハンゲームジャパンに転職。ゲーム事業を成長させ2007年に代表取締役社長に就任し、東日本大震災後の2011年6月にチャットアプリ「LINE」をリリースしました。災害などで通信インフラがストップした非常時に、メッセージを送った相手が中身を読んだかということだけでも確認できるようにしたいという思いが形になったアプリです。コミュニケーションツールとして正しい使い方の普及に力を入れ、1年半後には1億人に使ってもらえるようなツールに成長し、代表取締役社長を退任した2015年までに会社も大きく成長していました。
50歳を前にして「やり切った」という大きな達成感を得られたのですが、それと同時に「日本を元気にしたい」と考えるようにもなりました。私は高度経済成長期に生まれ育ち、バブル絶頂期に社会人になったので、日本が元気だった時代をよく知っています。だから、転職を重ねた中で、日本の活力がどんどん衰退していく状況には危機感を募らせていました。日本が元気をなくしてしまったのは、私を含むバブル世代の責任でもあります。そのため、「自分だけがこのまま逃げ切るのは良くない」と考えていました。そこで「次の世代のために何かを残そう」という思いで立ち上げたのがC Channelです。
日本の未来を決める女性を輝かせる
C Channelは「明るい話題を発信し、日本を元気にしたい」という思いの下で生まれた会社です。昨今のマスメディアはネガティブな話題のニュースを扱うことが多いので、素晴らしい人たちを応援することでポジティブな気持ちになれる仕事をしたいという思いもありました。
起業を検討している時には教育事業やヘルスケア事業など、社会の問題を直接解決する事業に取り組もうかとも考えたのですが、自分の経験を活かしてメディア事業を立ち上げることにしました。女性をターゲットに据えたのは、日本の未来は女性が決めると思ったからです。世の中の消費の8割は女性が購買決定権を持っていると言われ、転職の世界でも「嫁ブロック」という言葉があります。もっともっと明るい情報を世の中に提供することで日本の女性が元気になり、周りの挑戦を後押しするようになることが、日本を元気にするための突破口のひとつになり得ると考えました。
動画コンテンツの需要はさらに伸び、個人が発信した情報は企業やマスメディア以上に大きな影響力を持つようになるはずです。事実、日本の広告費に占める動画広告の割合は急速に伸び続けています。
AIの進化・普及により、近い将来には多くの仕事がなくなると言われる今、コロナ禍でECの台頭が加速したことに伴い、リアル店舗での接客・販売の仕事は減りつつあります。
しかし、顧客に最も近く、人気もある販売員の方は、インフルエンサーとして大きな発信力を持っています。特に中国ではその傾向が強く、今後日本でもその動きが出てくることでしょう。そのような方々の存在がAIに取って代わられることはありません。個人による情報発信はいつ、どこでもできるので自由度が高く、インフルエンサープラットフォーム「Lemon Square」を駆使すればインフルエンサーとしての実力と価値を飛躍的に高めることもできます。
我々は、活躍の場を失った販売員の方がインフルエンサー、ソーシャルバイヤーとしてオンライン上で輝ける環境を創出したいと考えています。インフルエンサーという感性の領域を技術の領域にしっかりと落とし込み、マネタイズしていくことが次のフェーズです。
会社のミッション、ビジョンに共感できる人を歓迎
会社自体が常に新しいことに挑戦しているため、ただ言われたことだけをやるというスタンスは通用しません。実際に、自らの専門性を発揮しながらチャレンジを重ねている人が多いですね。マーケティングやソーシャル領域、美容分野などへの興味や海外志向が強い人が多く、女性が能動的に活躍できる職場です。
採用時は、会社のミッション、ビジョンに心から共感していただける方かどうかも重視しています。これらを実現する手段が時代の流れとともに変わったとしても、目標自体が変わらない限りは「会社と一緒に実現したい」と思ってくださる方を歓迎します。
私のこれからの課題は、次世代を担う「人」を残していくこと。それは何も社内だけのことではありません。世の中のリーダーとして相応しい人のリーダーを育てられるだけのシステムを構築したいと考えています。
これから就職活動を始める、あるいは就職活動中の学生には、自分がやりたいと思うことを大切にしてほしいです。私の場合、学生時代にジャズのドラマーとして活動していたので、音楽関係の仕事を志してテレビ局に入りました。結果として畑違いの部署に配属されたのですが、コンピューターを学んでいるうちに登場したインターネットの可能性に魅せられ、好きな仕事をさせてもらいました。転職、起業したのも、自分のやりたいことを貫くためです。
やりたいことや自分の良さがなかなか見つからなければ消去法で考え、最後に残ったものに目を向けるという手もあります。尊敬する人に近づいて考え方や行動を真似てみることで、その人とは相容れない自分の個性が見えてくることもあるでしょう。そのようにして、自分らしくいられる会社を見つけてほしいと思います。